インタビュー #キャリアアップ支援

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自分の人生、自分でハンドルを握る

西部ガス株式会社 北九州総務部マネジャー

初村 清香さん

どんなお仕事をしていますか?

今の職場は、北九州地区唯一の管理部門で、人事、総務、経理、広報など、本社部門の出先機関のような業務を担当しています。
総務自体が初めての経験なので、土地の契約の話をされた時には全く分からず、本当に自分が対応してよいのか困惑しました。私が言えることやできることはとても少なくて、専門のスタッフや詳しい知識を持ったメンバーなどに教えてもらいながら、「最終的な責任は私が取る」と、自分ができることはそこしかないなと割り切って進めています。

これまでのキャリアヒストリーを教えてください。

これまで、営業部門4割、管理部門6割といった比率で職場を経験してきました。最初はガス料金の窓口や福利厚生を担当する部署を経験し、その後営業部門がしばらく続きました。大口のお客様に営業する部署で、主に料金等の管理を担当した後、一般のお客様やハウスメーカー様等に営業する部署に行きました。
そこで初めて営業をすることになったのですが、当時、女性はどちらかというとサポート的な役割を期待されていて、女性自身も「結婚や出産後も会社に残る」という感覚はなかったように思います。私は数少ない女性の営業となったので、このまま営業で終わるのかなと思っていました。
そんな中、たまたま私が結婚せず会社にいたところ、突然、人事労政部という部署で社員教育に携わることになったんです。そこでダイバーシティ、女性活躍に関する仕事を任されました。そこを10年程度経験して、その後、2年前の2019年4月に、マネジャーとしてこちらの部署に配属になりました。

どのような経緯で管理職になったのですか?

女性活躍を進め始めた当時、女性と括られることへの違和感や、なぜ女性にだけフォーカスする必要があるのかという疑問など、最初は自分の中でかなり葛藤がありました。自分なりに勉強したり、コンサルや他社の方に話を聞いたりして落とし込んでいったのですが、その間、その時々の上司からずっと「将来的に管理職になることを覚悟して仕事をしろ」と言われ続けていました。
最初の頃は、そうした取組の中で皆には管理職になるよう言いながら、自分ではなる気がなかったんです。でも、等級が少しずつ上がり管理職手前になった時、「もう腹を括らないとだめだな」と思いました。上司から、「管理職だったらどうするかという視点で仕事をしなさい」と言われ、後輩に接する時、自分が管理職ならどう指導していくかや、どう責任をもって問い合わせに回答するかなどを意識して仕事ができたのは、よかったなと思います。
そうしたことで気持ちの準備ができ、管理職試験を受けるよう言われた時には覚悟が決まっていました。それでも、積極的になりたいというより、私の場合、「管理職になることで何をしたいのか」を考えないとその気になれなかった経験も踏まえて、特に女性には、「勲章としての役職ではなく、この会社で自分が何をしたいとか、こういうことをしたいというのがあれば、管理職になった方がいい」という話し方をするようにしています。
昇進を伴う異動の内示の際には、人事部長から、「こういう理由でここに行かせようと思っている、あなたのこういう能力を期待しているから頑張っておいで」と言っていただき、とてもありがたかったです。部下が次の部署で頑張れるよう、上司が期待を持って言葉をかけることはとても重要なことだと改めて感じたので、私も自分がやってもらったことはメンバーに返していかないといけないなと思っています。

管理職として心がけていることはありますか?

どんなにきつい時でも、一杯いっぱいになっている時でも、「笑顔でいること」と「大きな声で挨拶をすること」は、絶対に守っていこうと思っています。上司が難しい顔をしている職場は雰囲気が良くないと経験上思っているので、作り笑いでも!
それから、部下との会話も大切に、メンバーが話しかけてきた時には即対応できるようにしておこうとは思っています。会話中はちゃんと顔を見るとか、そういう小さなところもですね。長く会社にいる分、色々な上司と仕事をしてきたので、これまでの仕事の経験はすごく参考になっています。

管理職になって変わったことはありますか?

大きく違うのは、「人が見る自分が変わること」。今までは同じ横並びでしたが、会話中にもやたらと役職名を付けられて、わざわざマネジャーとつけなくてもとも思いましたが、周りがそう意識しているということは、分かっておかないといけないな、と思いました。
また、入ってくる情報量が格段に変わったことで、景色が変わったなと思います。また現実的な景色としては窓をバックに、部長と自分の席が横並びになっているんです。最初は違和感がありましたが、離れてメンバーの島を見ると、やっていることの見え方が違う。そうした様々な景色の変化を目の当たりにして、「自分はそんなに変わっていないと思いたいけれど、それではだめなのかな」、「自分が管理職として求められていることがあるのだ」と思うようになりました。
ただ、気負わないようにはしていて、弱いところも見せています。「スケジュール管理等が苦手なので、忘れそうになったら指摘してください」と最初にお願いしたこともありました。
メンバーも、私があまり気負わなくて済むようにしてくれているようで助けられていて、頼った方が良いことはいっぱいあると実感しています。
もう一つの変化は、楽になったことです。メンバーでいる時の方がきつかったような気がします。今までは自分で決められないことが沢山ありましたが、管理職になって自分が決めてよいのだと分かった時に、もちろん責任は伴うので緊張感や不安も沢山ありましたが、楽しさや自分でハンドリングできるワクワク感がありました。

管理職になってよかったことは?

これまでの積み重ねから、「この会社でこういう貢献をしたい」、「こんな会社にしていきたい」、「何かワクワクできるような会社にしたい」などの思いがあったので、それを実現するための策を決めることができるという点でよかったなと思います。

部下への関わり方で気をつけていることはありますか?

男性女性というより、こだわる部分など一人ひとり全然違うので、それぞれに対応をしようと、指示や説明の仕方などを変えています。
また、私がまだ若かった時、上司から「この会社がどこに向かっていて、この部署は何をしないといけないのか」を言ってもらえる機会が少なくて、あまり落とし込みができなかったんですよね。会社のビジョンや部のビジョンもあるんですがうまく繋がらず、私の仕事はどこに向かっているのかとモヤモヤした経験がありました。それで、きちんと言葉にしようと思い、会社や部門などの様々なビジョンを一枚にまとめて、「皆さんの仕事が、全てここに繋がっているかどうか確認しながらやってください」と伝えています。

部下の育成については、どのように考えていますか?

部下に対しては、自分が直接関わることもありますし、リーダーに関わってもらうこともあります。以前、後輩の育成で困り、上司に「あの人は何度言っても分からない、育成できない」と愚痴を言ったら、「それはお前が悪い。お前がやり方を変えないから分からないままなんだ」と、はっきり言われたことがありました。それで、色々とやり方を変えてみた経験があったので、今の職場でも言い方や方法を考え、状況に応じて変えながら動いています。
とはいえ、やるだけやってもだめな時はだめなので、そこは諦めることも必要かなと思っています。そもそも一人でやっているのではなく企業なので、チームとして力を出せれば十分なんです。リーダーも一緒に巻き込みながら、チームとして正解を出せればいいかなと思っています。

これまでで一番大変だったことは何ですか?

女性活躍を担当していた頃は、ストレスで毎日吐いていたようなギリギリの時もありました。ですが、女性活躍というプロジェクト的なことを試しながらやってみることで、人を動かすこと、変えることの難しさや、その中で最大の成果を出すために何をすればよいのか、役員の巻き込み方、男性管理職にはどんな言い方をしたらよいのか、駆け引きのような部分も含め経験ができたのは、強みになったように思います。
とはいえその間、それが壁だと思ったことはなく、「走っていたら急に壁にぶち当たって、掘っていった方がいいのか乗り越えた方がいいのかを考えて進んでいるうちに、振り返ったら、あぁ色んな壁があったな」というような感じです。本当に目の前のことをクリアしていくだけでした。最初の頃は全然よくわからなかったので、コンサルの方に話を聞いたり、ダイバーシティを推進しているあらゆる会社に話を聞かせてもらいに行きました。
当時、管理職になるのはいわゆる「大卒の男性」で、自分も管理職枠として育てられたわけではなくて、たまたま経験の中でそうした仕事を与えられて、必死にこなしていたら「やらせてみようか」と試してもらえて、今に至るような感じです。

後輩女性へのメッセージ・アドバイスをお願いします。

女性は今の大変さに集中しがちなので、「10年後に自分がどうありたいか、10年後にこの会社がどうなっていてほしいか」というように、視点を先に向けるとよいのかなと思います。そうすれば、今自分が何をしていけばいいのかが少し見えて、楽になれるような気がします。
後は、世界を広くする。苦しい時は半径1メートル位しか見えていないようなことも多いので、社外の人と会って話を聞いてみたりセミナーに出たりしてみると、何か自分に引っかかることがあるかもしれません。今いる場所ではない、セカンドステージやサードステージと呼ばれるような場所を見つけるとよいと思います。
それと、やはり自分の人生なので、自分でハンドルを握って欲しいですね。「会社に言われたから、誰々が言ったから」ではなく、「自分がこうしたい」と。そうすれば何かが起こった時も、「私が選んだから仕方がない」と諦めがついたり、逆に楽しくなれたりもします。誰かのせいではなくて、よいも悪いも、会社に居続けるのも辞めるのも、何かを選ぶのも選ばないのも、全部自分で決めるんです。
でも、それでも苦しくはなるものなので、「そういう時は一人で抱えこまず、一緒に話しましょう」と、そうした受け皿に自分がなれればいいなとは思っています。

趣味・健康管理・ストレス解消法など

実は、予定が入っていない日は家から一歩も出ない、人にも連絡を取りたくない、ネットも見たくないという感じです(笑)。ずっと外に出続けるとくたびれてしまい、どこかで引きこもってエネルギー補充しないとだめな時があります。
ストレス発散については、仲のよい人とおいしいものを食べに行くことでしょうか。私は人と話すことで自分の思いがまとまっていくタイプのようで、楽しく会話をしていく中で、仕事の仕方やこれからやりたいことが見えてきたりします。

(2020.12.9)